炭素税・排出枠取引5.8兆円規模
脱炭素に向け、温暖化ガスの排出量取引や炭素税などカーボンプライシングと呼ばれる手法の導入が進んでいる。世界銀行の調査で2021年までの導入国・地域は64ヵ国に上る。世界の温暖化ガスの排出の2割をカバーし課金や税収入は約5.8兆円に膨らんでいる。炭素価格は国によって大きな差があり、取り組みの濃淡も浮き彫りになっている。二酸化炭素の排出に価格を設定するカーボンプライシングは排出量の多い化石燃料に課金や課税をし、排出減を促す施策だ。排出量に応じて課税する炭素税と、個別企業の排出上限を決め、対策が進んでいる企業と不足する企業が排出枠を売り買いする排出量取引の2つの手法が広がっている。世界はカーボンプライシングを巡り、地球の気温上昇を2度以内に抑えるパリ協定の目標には、各国の炭素価格の水準を二酸化炭素1㌧あたり4,500円~9,000円(40㌦~80㌦)程度にする必要があると指摘している。
日本後手 競争力低下 国境炭素税導入
日本の炭素価格は世界の最低水準だ。日本は全国規模の排出量取引は導入されていない。炭素税にあたる温暖化対策税も1㌧289円と東欧や東南アジアと並んで低い。本格導入に向けて経済産業、環境省がそれぞれ検討している段階で、議論は遅れている。制度設計の難航も予想される。適切水準の制度の導入遅れは、日本の産業の国際競争力に不利に働く可能性がある。EUは温暖化対策が不十分な国からの輸入品に価格を上乗せする「国境炭素税」を23年までに導入する方針を打ち出している。国際炭素税は米国も検討する。実現すれば、日本企業が欧米で経済活動をしたり欧米と貿易したりする際、国境を越えるたびに追加コストを支払うことになりかねない。