スコープ3
脱炭素の取り組みが広がる中で、企業には「スコープ3」における二酸化炭素の排出減が求められている。自社の工場などから直接排出されるものをスコープ1、自社の電力使用に伴う排出がスコープ2、スコープ3とは取引先なども含めたサプライチェーンからの排出のことを指す。スコープ3を含めた削減目標設定を促す国際組織「SBTイニシアチブ」の参加企業は9月中旬時点で1780社あり、国別では英国の293社が首位で、米国の288社、日本161社と続く。スコープ3の削減目標の開示について、日本企業には危機感が欠如している。欧州では環境対策が十分でない国からの輸入品に事実上の関税をかける国境炭素調整措置の導入を検討中だ。スコープ3の削減に踏み込んでいない企業の製品は、将来的に輸出できなくなる可能性がある。外部圧力も高まっている。オランダの地方裁判所は5月、英蘭石油大手のロイヤル・ダッチ・シェルに対して、スコープ3を含めた二酸化炭素排出量の削減を命じる判決を出した。同社は7月に判決を不服として控訴すると発表したが、環境団体や投資家などからの視線が厳しくなっているのは確かだ。日本企業はスコープ3の算出は後回しになりがちだ。算出方法について国際的な基準はどうなりそうなのかを見極めながら、日本企業が欧州を中心とした議論から取り残されないように枠組みを中心とした整備をする必要がある。