発信不足、合意も蚊帳の外
COP26は9日から関係閣僚会合が始まる。山口壮環境相は衆院選などの政治日程のために出発が遅れ、初日は間に合わない。石化火力発電所や化石燃料への海外での公的融資の停止合意も蚊帳の外。日本はめまぐるしく動く脱炭素の議論で後手に回り、存在感が薄れている。COPの閣僚級セッションは閣僚本人の出席が基本だ。2国間交渉やスピーチなども閣僚の役割が大きい。山口氏の到着が遅れる分だけ日本はアピールの機会を失う。これまで日本の脱炭素政策は国際的に一定の評価を得ていたはずだった。だが、COP26で風景は一変。衆院選直後に首脳級会合に駆けつけた岸田文雄首相の演説も波紋を呼んだ。首相は再生可能エネルギーの不安定さに触れて「既存の火力発電をゼロエミッション化し、活用することも必要だ」と強調した。一連の発言は化石燃料の維持が狙いと受け止められ、国際環境非政府組(NGO)などから「気候変動対策に後ろ向き」と批判された。首相はアジアの脱炭素支援に5年間で1.1兆円を追加支援すると表明し、リーダー役を目指す姿勢を崩していない。COP26の日程は残り少ない。先進国と途上国の溝が埋まらないなか、架け橋として存在感を示せるか。出遅れを取り戻す調整力が問われる。