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CO₂削減量取引で脱炭素

11日 東証「Jクレジット」市場開設

東京証券取引所は11日、二酸化炭素排出量を取引するカーボン・クレジット市場を開設する。再生可能エネルギーの導入や森林設備による排出削減分を国が認証する「Jークレジット」を企業や地方自治体などが売買する。企業の脱炭素を後押しする狙いだが、売買の厚みや価格をどう担保するかなどの課題もある。カーボン・クレジットは、企業などが太陽光発電などの再生可能エネルギーやエネルギー効率の高い省エネ製品を導入したり、CO₂の吸収源である森林を育成したりといった取組みで減らしたCO₂の排出量を、クレジットとして取引できるようにする仕組み。排出削減に取り組む企業は削減した分だけ多くのクレジットを手にでき、市場で売ることで売却益を得られる。排出量の多い企業にとっては、クレジットを購入して自社の排出量と相殺することで実質的な排出量を抑え、投資家などからの排出削減の要望に応えられる。価格が高ければ高いほど企業に脱炭素を促す効果が見込める。11日に開設する市場では当面、国が削減効果を認める「Jークレジット」のみを対象とし、民間の認証クレジットは除く。排出量1㌧単位で売り買いでき、約定は午前と午後の1日2回。結果は東証のウェブサイトで毎営業日公表する。

課題

もっとも課題も多い。一つは価格をどう担保していくか。2022年9月から23年1月に東証が実施した実証実験での平均取引価格(加重平均)は、省エネに由来するクレジットで1㌧1,431円、再エネ由来で2,953円だった。国際エネルギー機関(IEA)は50年の排出ゼロに必要な先進国の炭素価格を30年に140㌦(約21,000円)と試算するが、足元の水準は1割程度にとどまる。市場取引を通じて価格をいかに押し上げていけるかがポイントとなる。売買の厚みを確保することも重要だ。売買が少なければ希望する価格で取引が成立しにくくなり、クレジットを創出したり購入したりする機運が損なわれてしまうためだ。実証実験では、市場を開いた85営業日のうち約4割にあたる35営業日で取引が成立しなかった。参加した183社・団体のうち実際に売買できたのも55社・団体にとどまり、123社は発注そのものを見送った。売買の内訳を見ても、民間同士の取引は12%で、残る88%は政府と民間による取引だった。家庭が政府補助金を使った太陽光パネルの設置などで創出したクレジットは政府が引き受ける仕組みを使っているためで、発行済みクレジットの約6割は政府保有だ。もっとも、今後の発展余地は大きい。経済産業省は国内排出量の4割を占める計560社超の企業を対象に、24年後半にも自主的な排出量取引を始める計画を掲げる。売買には東証のカーボン・クレジット市場を活用し、Jークレジット以外の民間クレジットも売買できるようにする方向だ。

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