30年後、難民2億人に
COP28は温暖化対策だけではなく、気候変動の影響で住む土地を追われた難民の問題も議論している。「地球温暖化の影響で多くの国で多くの人が避難民になっている」2日のCOP28会合で南スーダンのキール大統領は訴えた。アフリカなどを中心に30年後には2億人の「気候難民」が生まれるとの研究結果がある。紛争の発生も増加しかねない。2023年夏、アフリカのガボンとニジェールでクーデターが発生した。マリやブルキナファソ、ギニアなどでも相次ぐ。こうした紛争や対立の遠因に気候変動問題が挙げられる。異常気象で水や食料が不足し生活が苦しくなる。政府への不満がたまれば、政変や紛争に繋がりやすい。国連機関の分析では内戦状態にあるスーダンやソマリアでは干ばつや洪水が食料不安や飢餓を生み、紛争の一因になった。南スーダンの難民でCOP28参加者の一人は「気候危機は人間の危機でもある。我々の声も聞いてほしい」と話す。被害者へのセーフティーネットが整っていない国では食料危機や政情不安が起きると国民が安全や衣食住を求めて他国へ移る。海面上昇で国自体が水没する危険にさらされている島諸国も深刻だ。太平洋に浮かぶツバルのナタノ首相は「海面上昇はわが国でも起きている。1日たりとも無駄にできない」と訴える。ツバルは11月にオーストラリアと移住協定を結んだ。世界銀行は50年までに難民の数が2億人に膨れ上がり、地域もアフリカや中東だけでなく東欧や中国に及ぶと分析する。米欧ではアフリカや中南米から難民や移民が押し寄せる可能性が高まる。先進国でも難民の扱いを巡り政治的な対立が深まっている。COP28で大枠を合意した基金は気象災害や紛争で難民となった人々も支援対象にするかを検討している。国連難民高等弁務裁判事務所は「気候変動は環境悪化に最も貢献しなかった人々が最も苦しむという明らかな不公正だ」と先進国側への対応を求める。国内避難民監視センターによると、21年に気候変動に関連した自然災害による国内避難民はアフリカを中心に2230万人に上った。