脱炭素成果 証明容易に
環境省は2025年度にも工場などが排出する温暖化ガスについて企業にデータ提供を始める。24年度に打ち上げる新型の人工衛星を活用し事業所ごとの二酸化炭素やメタンの量、濃度を測定する。企業が脱炭素の成果を証明しやすくし、資金調達や投資を後押しする。環境省が衛星の活用例として企業などに説明を始めた。衛星は地球から反射する太陽光の強さを利用して温暖化ガスの量や濃度を割り出す。CO₂やメタンは太陽光を吸収する。濃度が高いと跳ね返る光は弱くなる。現在は衛星「いぶき」「いぶき2号」の2基を使って160㌖ごとに直径10㌔の点で測定し国ごとの排出量を算出する。24年度に打ち上げる3基目は1㌔四方での測定を目指す。大工場や製鉄所といった事業所ごとの排出量や濃度を正確に把握できるようになる。衛星から得たデータはインターネット上で公開する。民間の衛星データプラットフォーム「テルース」を活用し地図上でわかるようにする予定だ。企業から個別の依頼にも対応出来るよう検討を進める。測定を一定期間続ければ、各事業所での脱炭素の取り組みの成果もデータで得られる。排出量はガソリンや電気などの使用量から算出するのが一般的だ。正確な数値を割り出しにくい課題がある。衛星による精密なデータなら信頼性が増す。政府が正確性を担保することで削減の証明の手法が不透明な「グリーンウォッシュ」の批判を避けることにも繋がる。企業の環境対応によって金利が下がる「サスティナビリティ・リンク・ローン(SLL)」への活用も見込む。SLLは企業が温暖化ガス排出量の低減などの目標を設定し、金利優遇を受ける。目標策定など通常の融資に比べて手間やコストがかかる。政府がデータを提供すれば人手や資金に余裕がない中堅・中小企業にも裾野が広がる可能性がある。