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気候変動リスク世界で総点検へ

銀行健全性など分析

世界の約30ヵ国・地域の金融当局が気候変動に伴う金融リスクの把握に乗り出す。欧州中央銀行(ECB)は2022年に金融機関の財務の健全性を審査する。新興国では中国やロシアが準備を進める。脱炭素への移行はコストがかかるうえに、価値を失う設備や技術がある。融資先の業績悪化が懸念されるため、各国当局は銀行経営に与える影響を点検する。気候変動リスクを把握するため、金融機関の財務について厳格に調べるストレステスト(健全性審査)に動くのが欧州だ。ECBは22年に実施する。脱炭素への取り組みが進んだり遅れたりする場合などを想定し、個別の銀行経営にどのような影響があるかを調べる。石油や石炭エネルギー関連の投融資を抱える金融機関は審査次第で「将来、自己資本の積み増しが必要になる可能性がある」。国際決済銀行(BIS)は化石燃料など脱炭素で価値を失う資産の規模が最大2,000兆円に達する可能性を指摘する。資産価値が急激に落ち込む事があれば、企業自身の経営が揺らぎ、銀行には投融資が焦げ付くといったリスクが出てくる。BISは銀行の健全性が失われると、金融危機の引き金になりかねないと警鐘をならす。

気候リスクの把握へ

日本の金融庁と日銀は22年にかけて3メガバンクと大手損害保険会社を対象に、まずシナリオ分析を進める方針だ。経済全体や産業ごとの影響を調べることで、金融機関に経営リスクの把握を促す。カナダやオーストラリアは今秋にかけて準備を進めてきた。米国は今のところ目立った動きはない。気候変動は数十年にわたり影響が出てくるもので、脱炭素の取り組みも時間をかけて進むことになる。シナリオ分析では景気がどのように推移するかは予測ができるものの、個別の金融機関に自己資本の積み増しを求めることまでは踏み込まない。もっとも、ストレステストは経済環境が悪化しても銀行が財務の健全性を保てるかを厳格に調べる手法だ。各国での実施が国際基準になれば、単にシナリオ分析にとどまる国は規制作りなどで出遅れる可能性がある。投資家がストレステスト実施国の金融機関を選好すれば、株価や経営そのものにも影響を及ぼしかねない。

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