排出量取引の対象拡大
ドイツが脱炭素に向け、ガソリンなどの燃料代を上げる仕組みを2021年に導入した。販売業者がガソリンを売るには、二酸化炭素を出した量に応じて「排出枠」を買わなければならない。購入費が転嫁されて小売価格が上がり、消費を減らす効果が生まれる。負担の抑制に偏る日本と比べ、ドイツは厳しい規制で先に進む。ドイツは「排出量取引」と呼ぶ制度の対象を燃料に広げた。現状の排出量取引の仕組みではまず国が業界ごとに二酸化炭素を出して良い量を決めたうえで、二酸化炭素に価格をつける。企業は二酸化炭素を出すには出す権利を「排出枠」として買わなければならない。燃料は燃えると二酸化炭素を出す。21年からは燃料事業者は売る分だけ枠を買う。余ったら市場で売れるが、事業者にとっては追加のコスト負担になっている。当初の5年間は導入期間として排出枠の価格は固定され、21年は二酸化炭素の排出量1㌧あたり25€(約3,350円)に設定された。段階的に引き上げられ、25年には2倍強の55€になる。26年からはオークション形式で、需要に応じて価格を決める仕組みが提示された。ロシアのウクライナ侵攻を受け、ドイツでもガソリン価格は上昇している。足元の価格は1年前より40%弱上がり、1㍑あたり2€(268円)する。排出量取引はこれまで、電力会社などのエネルギー企業と、一般に二酸化炭素排出量の多い製造業を対象に導入された。これらの収入は国庫に入り、政府は再生エネルギーへの投資など、気候変動対策の予算にまわす。