設備集約や共同投資
政府は脱炭素に向け、企業が連携しやすくなるよう独占禁止法の適用緩和や基準明確化などの必要性を検討する。温暖化ガスの排出量が多い鉄鋼や素材関連の事業統合やエネルギー企業間の共同投資を念頭に置く。欧州では環境を保全する目的であればカルテル規制を免除する例が出来ており、日本も競争政策の見直しを図る。経済産業省は競争法の専門家やエネルギー関連の研究所で構成する研究会を近く設ける欧州の取り組みも参考にして事例研究を進める。脱炭素化に向け新しい技術の開発や設備投資に複数企業の連携が欠かせない。現在の独禁法を適用すると、脱炭素につながる試みであっても市場シェアが高い企業同士は事業統合などが難しく対策が遅れたり萎縮させたりする恐れがある。例えば他社に製造を委託するOEMを活用すれば、生産設備を減らせて環境負荷の低減に繋がる。各社の技術や開発設備を共有すれば革新的な脱炭素化技術や製品開発が進む可能性がある。
大手同士で連携
環境省によると国内のエネルギー起源の二酸化炭素排出量は業種別で鉄鋼業が最も多く、産業からの排出の4割を占める。化学工業が15%で続く。どちらの業界も現在の規制の範囲や技術のもとでは劇的な脱炭素化は期待できない。独禁法の適用を緩和すれば、事業統合などによる設備集約を促せる。設備投資に莫大な費用がかかるアンモニア混焼や水素ステーションなどのエネルギー分野の共同投資も視野に入れることができる。脱炭素を進めるにあたり、欧州では独禁法の適用を見直している。例えばドイツでは競争当局が差し止めたすべり軸受けの事業統合について、環境保全に繋がると改めて承認した。脱炭素技術の育成を阻むような企業の連携は厳しく取り締まる。環境保全全般で独禁法の考え方を示す指針はまだない。今後、脱炭素に向けてどういった場合なら独禁法に抵触しないかを検討し、基準を明確化する動きが加速するとみられる。