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気候変動「前例なし」が日常化

異常気象は日常化へ

英国では2022年7月中旬、気温が40°を超えて観測史上最高となり、1976年の熱波と比較する人が増えた。しかし気候科学者らは観測史上最高というのは過去に例がないことなので、過去の方がどうだったなどと言っても意味がないと取り合わなかった。これからは記録破りの現象がもっと増えそうだ。米海洋大気局(NOAA)は6月上旬、「エルニーニョ現象」が発生したと正式に発表した。およそ2~7年の間隔で不規則に起こるもので南米ペルー沖など太平洋熱帯域の東部の海面温度が上昇し、既に暖まっている大気へさらに熱が放出される。一部の科学者は地球温暖化の許容限度とされる1.5度の気温上昇幅を一時的に超えるおそれが近づいたとみる。実際そうなるかどうかはともかく、エルニーニョの発生はもともと予想がつかない気候変動に新たな局面が到来したことを告げるものだ。エルニーニョは赤道直下の太平洋で観察される気候の周期変動の温暖期とされる。逆の寒冷期は「ラニーニャ」と呼ばれる。この周期によって貿易風が弱まったり強まったりするのがエルニーニョ南方振動(ENSO)で、世界中に低気圧を運ぶジェット気流に影響を及ぼす。エルニーニョによる大気の変化は北半球の秋から冬にかけて強まるとみられ、風や雨のパターンを左右する。米国南部で降水量が増える一方、南米北部、アフリカ南部、南アジア、オーストラリア南部で気温が高くなり、雨量が減ると予想される。ただ、それ以上は定かではない。エルニーニョがいつピークを迎えるかも不明だ。英レディング大学のリチャード・アラン教授は「2024年に猛威を振るえば、世界的に史上最高気温がまた更新される可能性が極めて高いと話す。それぞれの国に必要な対策を予測するのは難しい。英オックスフォード大学の教授は気候モデルは地球全体では参考になるが、個別の国の長期予測にはあまり役立たないという。これは各国が気候変動に対処するため今後数年、堤防などを整備していくときに大きな問題となる。地球温暖化の進行でENSOのサイクルがどう変わるかを調べるため、各国が協力しながらスーパーコンピューターを使って高精度の大がかりな予測を立てるべきだと説く。気候変動でエルニーニョやラニーニャの頻度や規模がどう変わり得るかを把握することは「桁外れに複雑な問題で、国レベルで取り組もうとしても無理だ」と教授は言う。地球の平均気温は産業革命前より少なくとも1.1度高い。22年の平均気温は英国や中国など28ヵ国で過去最高だった。今年もすでに4月、記録的な暑さがスペインを襲った。カナダでは大規模な山火事が発生し、その煙で米ニューヨーク市は深刻な大気汚染に見舞われた。これは前例のない現象が日常的に起こりつつあるという危険なメッセージにほかならない。

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