昨年、世界投資240兆円
再生可能エネルギーと原子力発電を合わせた「脱炭素電源」の比率が高まってきた。G7と20ヵ国の総発電量に占める比率は2010年以降、ともに7㌽あまり伸びた。太陽光と風力がけん引役で、原子力は各国で温度差がある。出遅れる日本は対策を急ぐ。
日本は後れ、石炭火力上昇
「30年までに再生エネルギーを3倍にする」10日に閉幕したインドでのG20首脳会議の首脳宣言にはこう盛り込まれた。事前の閣僚会合の宣言では見送った野心的な目標で、気候問題への危機感が今回の明記の背景にある。今夏は世界で異常な高温が続いた。国連のグテレス事務総長は7月に「地球温暖化の時代は終り地球が沸騰する時代がきた」と表現した。各国は温暖化ガスの排出量を減らそうと脱炭素電源を増やしてきた。石炭や天然ガスを輸出してきたロシアのウクライナ侵攻を受け、足元ではエネルギー安全保障の観点からも再生エネを導入する動きが加速している。各国の電源比率を英オックスフォード大学などが運営する「Our World in Data」のデータで比べると、G7の脱炭素電源は10年の39%から22年の47%まで伸びた。新興国も含むG20でみても〃期間に33%から40%になった。太陽光と風力が全体の数字を押し上げている。原発の再稼働が進まず、再生エネの導入も遅れる日本は脱炭素比率が36%から29%に低下した。10年時点で25%だった原子力比率が東日本大震災での事故を境に5%にまで落ちた。その分を石炭や天然ガス火力、太陽光発電で補った。この間に石炭火力の比率が高まったのはG7では日本だけだ。国際エネルギー機関が23年5月に発表した報告書によると、22年に世界でおよそ2兆6000億㌦がエネルギー分野に投資され、約1兆6000億㌦が脱炭素投資に回った。世界の脱炭素政策を巡っては11月にアラブ首長国連邦で開く第28回気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)の議論に注目が集まる。