石炭火力継続強まる批判
日本が石炭火力発電を継続する姿勢を内外に示していることへの批判が強まっている。ドバイで開催されているCOP28に関連し、米国やフランスが主導して立ち上げた脱石炭の有志連合に日本は参加しなかった。経済界から脱炭素への消極姿勢に注文が相次いでいる。岸田文雄首相は1日のCOP28の首脳会合で、石炭火力を巡り「対策の取れていない新規の建設はしない」と表明した。国連などが求める稼働中の発電所の廃止時期には言及しなかった。具体的な廃止時期が見通せないことから、有志国連合への参加も見送った。日本は現行計画で2030年度の電源構成の19%を石炭火力を温存し、将来はアンモニアを石炭に混ぜる事業を脱炭素政策の柱にすえる。アンモニアだけを燃やせば、温暖化ガスは排出しない。この技術の本格的な商用化の目標時期は2040年代後半以降になる。各国が新たに定める必要がある35年のCO₂削減目標にはほとんど貢献しない。アンモニアの50%混焼を実現しても、ガス火力発電より多くの温暖化ガスを排出するとの試算もある。日本は廃止の年限を明記している別の脱石炭連合におG7で唯一参加していない。経済界も日本の脱炭素の姿勢に注文をつけている。パナソニックHDやRICOH、AGCなど140社は5日、COP28に合せて連名で温暖化ガスの排出に上限を設定するカーボンプライシングの早期導入を訴えた。カーボンプライシングの収入から石炭火力へのアンモニア混焼などの技術に支援しないことも求めている。日本は足元で3割近くを石炭火力に依存しており、2030年度時点でも発電量の2割程度を頼る計画になっている。11年度の東京電力福島第1原発事故後、国内の原発稼働が止まった。その時に頼ったのは、再生エネよりも石炭火力発電所の増設だった。新設したばかりの石炭火力の早期閉鎖を進めた場合、発電所を建てた企業は投資を回収できなくなる。日本は原発の再稼働や風力発電の普及が進んでいない。欧州が主張するように30年時点で全ての石炭火力を廃止するのは現実的に難しい。ただ年限を明示せずに石炭の重要性を訴えるだけでは気候危機が強まる中で国際社会の理解は得られない。