今年発行28兆円 脱炭素へ調達急増
世界の企業がESG社債の発行を増やしている。2121年の発行は2568億㌦(約28兆円)で、20年1月~6月に比べ3.4倍になった。脱炭素社会に向け、企業は気候変動対策の投資や研究を急いでいる。投資家の需要は高まっており、ESG社債の利率が通常の社債より低くなる事例も出ている。金融情報会社のデータを基に6月25日時点の発行額を集計した。ESG社債のうち発行が急増しているのが環境関連の事業に資金の使途を絞る環境債だ。発行額は2.9倍の1628億㌦で全体の63%を占めた。世界の脱炭素に関係する投融資は50年までの30年間で1.2京円必要になる。企業は多額の資金調達を迫られることになる。低金利が続く中、幅広い投資家から長期資金を調達できるESG社債を発行する企業が増えている。1株利益の希薄化の懸念がある公募増資や金利負担が重い銀行借り入れと比べると、有力な資金調達になっている。
ESG社債発行首位は欧州、企業は具体的な環境対応の開示へ
環境対策で先行する欧州は3.2倍の1214億㌦と世界全体の47%を占めた。日本は4.7倍の101億㌦で、米国は2.5倍の291億㌦だった。トヨタ自動車は3月、安全技術や電気自動車の開発向けなどにESG社債を円建てで1300億円、ドル建てで27億5000万㌦発行した。米アマゾンも5月に10億㌦を調達した。今後、企業は環境対応で具体的な成果を示さないと、投資家の選別が厳しくなる。調達に伴う金利負担もあり、企業にとって生産性を高める改革も重要になる。