ESG、静かなデータ革命
アピールがうまい企業ばかりが優遇されていないか。 ESG投資に付きまとってきたこんな疑問を吹き飛ばすような変化が静かに進んでいる。ESG関連の情報開示が急速に進んだ結果、環境や社会への貢献度定量的に把握しやすくなってきたのだ。利益とESG本来の姿が実現に向かおうとしている。「ESG情報が開示され、取り組みへの評価が市場に織り込まれることが運用収益の源泉」三井住友DSアセットマネジメントは明かす。同社が運用を担う公募投資信託「三井・住友・日本式ESGファンド」の基準価格は2018年2月の設定来で23%上昇し、同期間の市場平均を大幅に上回る。秘訣は「ESG過小評価銘柄」への選別投資だ。同投資は2段構えでESGを評価する。まず、企業が開示するESG情報を調べる。さらに企業の役員などに個別に会い、環境関連製品・サービスの収益性といった様々なデータを独自に集める。こうすればESGを巡る企業の「外見」と「内実」が見えてくる。
企業の情報開示は爆発的に増
ESG投資の前身である社会的責任投資(SRI)が普及した2000年代前半には、企業の情報開示は限定的で、投資家は個別企業への聞き取りをベースに「優良企業」を選んできた。調査できる企業数は限られ、結果として投資対象は大企業に偏り、運用成績もさえなかった。企業は環境や社会問題に真面目に取り組んでも市場での評価につながらないという疑問を感じていた。流れは変わり、ここ数年で企業の情報開示は爆発的に増えている。気候関連財務情報開示タスクフォースの提言や各国が競うようにESG情報開示規則を導入したことがきっかけとなった。情報量の増加は投資手法に本質的な変化をもたらしている。個別企業に聞き取らなくても温暖化ガス排出量や水使用量、離職率などのデータを一括して取得し、投資判断に活用できるようになった。