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混迷する国際エネルギー市場 Vol.1

脱炭素の理念、現実と調整を

世界が脱炭素への動きを加速する中、燃料時に温暖化ガスを排出する化石燃料の代表ともいえる原油価格、天然ガスが高騰している。10月末時点で原油は1㌭8$と7年ぶり高値、欧州の天然ガス指標価格オランダTTFは1メガワット時当たり155€、アジアの液化天然ガス(LNG)スポット価格は100万英熱量単価当たり56$と過去最高値を記録している。原油価格上昇の理由は、需要面においては、世界の新型コロナウィルス感染拡大に歯止めがかかる兆しが見え、経済活動再開とともに石油需要が増加しつつある点が挙げられる。また各地で発生した寒波、猛暑、異常気象のインパクトもある。供給面においては、サウジアラビアなどの石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非OPEC加盟国を合わせたOPECプラスが、小刻みな増産を続け、需要の伸びと比較して供給を絞っているためだ。加えて米国のシェール生産も伸び悩んでいる。生産企業が環境規制の強化、ESG投資の加速などの要因で、新規の開発投資に慎重にならざるを得ない国内状況が背景にある。

現実の問題と枠組み

現実問題として、石油は人類にとっての食糧と同じく、代替品のない生活必需品である。従って需要の価格弾力性が小さく、少しでも不足すると価格が高騰する性格を持っている。だから世界の石油需要日量1億㌭に対して、わずか日量100万㌭の供給不足であっても、原油価格高騰を引き起こすのだ。これまではサウジアラビアの余剰能力、米国シェールの機動的な開発が、原油価格乱高下に対して一定のバッファー(緩衝)役となってきた。しかし、脱炭素の動き以降、サウジアラビアをはじめとした中東産油国、米国シェールが新規投資に慎重な姿勢を続けるようになると、寒波、猛暑の来襲などによる需要の増加に供給が柔軟に対応できなくなるおそれがある。ラーニャ現象により、22年の冬に寒波が来襲することが予想され、暖房用の石油需要、LNG需要が急増した場合には、原油価格は1㌭100$を超え、LNGスポット価格が100万英熱量当たり50$超えとなることも現実味を帯びる。脱炭素社会を目指すうえで、日本をはじめとした石油消費国は、化石燃料の長期的な消費抑制政策と石油・天然ガスの持続的な安定・供給・エネルギー安全保障をどのように調和させるのか。まずは長期的な視点から石油・天然ガスの消費削減を目指しながらも、現実的な一定量の投資と生産を維持する枠組み作りが求められる。

 

 

※ 引用 日本経済新聞 和光大学教授 岩間 剛一 氏 コラム

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