選別色、国内でも危機感
ESGを巡り、運用会社が情報開示の強化を迫られている。米国ではESG商品の統一基準の検討が始まり、先行する欧州では2023年から投資先企業の男女賃金格差など詳細な開示が義務付けられる。「見せかけESG」を排除するのが狙いだ。機関投資家はESGファンドの選別色を強めており、対応の善しあしで運用会社の淘汰が進む可能性もある。米調査会社モーニングスターによると、世界のESG関連ファンドの運用資産総額は3月末時点で2兆7000億㌦(約340兆円)と前年同期に比べ約39%増えた。このうち約80%と圧倒的なシェアを誇るのが取り組みが先行する欧州だ。EUは21年3月から金融機関にESG情報開示を義務付ける「サスティナブルファイナンス開示規則」を適用している。運用会社は会社全体と金融商品のそれぞれでESGの要素をどう取り入れているかを開示する。欧州で金融商品を提供する日本の運用会社も同様の対応が求められている。運用会社は自社のファンドを「一般的な商品」「環境や社会の特性を促進する商品」「サスティナブルな投資目的を持つ商品」の3つに分類する。運用会社がファンドごとにどの分類に該当するかを選ぶ。開示内容は定性的な説明が多い。さらに23年1月からは詳細な数値を含めたより厳格な開示が義務付けられる。具体的には温暖化ガス排出量や投資先企業の男女賃金格差、化石燃料関連企業への投資割合など18項目の開示が必須になる。欧米に比べて、日本はまだ開示基準には踏み込んでいない。金融庁は4月下旬にESG投資信託を提供する運用会社に要請する事項をまとめた。さらに「適切な対応がとれないならば扱うべきではない」と突き放した。