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日本の「GX」看板倒れ

アジアにも後れ、風力は中国の160分の1

脱炭素分野で日本の出遅れが鮮明だ。世界はウクライナ危機で経済・安全保障の両面から脱化石燃料を加速しており、再生可能エネルギーの導入に邁進する。日本はアジア諸国にも再生エネの導入で後れを取るのが現状だ。岸田文雄政権が掲げるグリーントランスフォーメーション(GX)は足元の具体策を欠き、看板倒れとの印象を拭えない。「2030年までの『勝負の10年』に、全ての部門において急速且つ大幅で、即時の温室効果ガス排出削減を実施しなければならない」5月21日閉幕の主要7ヵ国首脳会議の会合で、共同声明には「世界の温暖化ガス排出量を35年までに19年比60%削減する緊急性が高まっている」とも盛り込まれた。これまでは日本は30年度に13年度比で46%削減する方針だったが、さらに上積みを目指すとの宣言だ。

再生エネ導入予測、ベトナムに抜かれる

勇ましい言葉とは裏腹に、日本の実績は振るわない。たとえば世界で主流になった風力発電。業界団体で構成する世界風力会議によると、22年には中国は約3700万㌔㍗、米国は約860万㌔㍗増やした。日本はわずか23万㌔㍗。原発1基の5分の1程度。年間で中国の160分の1しか導入できず、インドやトルコ、台湾よりも下位に沈んだ。国際エネルギー機関(IEA)の22年12月の予測では、主要国は再生エネを急速に増やす一方、日本は伸びが鈍化する。27年の年間導入量予測で日本は最大約710万㌔㍗だが、同約730万㌔㍗のベトナムに抜かれる見通しだ。洋上風力発電が日本で大規模に立ち上がるのは30年前後と遅い。広島サミットの共同文書に「再生エネの導入を大幅に加速する」と明記したものの、実態が伴わない。国が30年度時点の野心的目標として約1800万㌔㍗を見込む陸上風力も現状は約460万㌔㍗にとどまっている。事業者が地元と十分協議せずに景観の観点からトラブルになる案件が相次ぎ、自治体は国とは別のアセスメントを次々に導入する。GX基本方針で「再生エネを最優先」と位置づけるならば、国が規制の基準を統一するなど全面に立って推進しなければ大幅拡大はおぼつかない。それでも国は「地域との合意形成に向けた適切なコミュニュケーションの不足」と事業者の責任を追及するばかりだ。脱炭素の原資として、二酸化炭素排出に価格をつける「カーボンプライシング」を導入する方針だが、規模・時期ともに見劣りする。政府は20兆円規模の「GX移行債」をGX基本方針に盛り込んだ。温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする政府目標の2050年までに償還を終える。仮に20兆円を30年から50年にかけて完済すれば、12年に導入した地球温暖化対策税の税収規模で換算した炭素価格は排出1㌧あたり1,000円ほど。欧州の10分の1程度だ。韓国は1,600円、中国も1,100円と日本を上回る。国際通貨基金(IMF)は30年に1㌧あたり75㌦(約1万円)以上にする必要があると試算するが、数字はほど遠い。

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